このブログを読んでいる皆さんは、ルービックキューブの総パターン数ぐらいは知っているでしょう。
今のところ
43252003274489856000通り(およそ4300京通り)
とされています。
計算方法も大体の方が知っていると思います。
センターは固定して考えます。
エッジとコーナーの位置はそれぞれ12!通りと8!通りです。ただしパリティがあるので全体を2分の1にします。
各位置での向きはエッジが2^11通り、コーナーは3^7通りです。
(最後の一つは自動的に決まるので計算に含めません。)
よって計算は
12!×8!×2^11×3^7÷2=43252003274489856000
となります。
さて、この4300京という数字。あまりに多すぎるので想像しにくいでしょう。
いったいいかほどのものなのでしょうか。
「全パターンの解法覚えたら最強じゃね?」というのはよく言われる話です。
では、実際に全部覚えてもらいましょう。
その覚えてもらう人は相当に頭の切れる人で、1秒に1パターン覚えられます。
その人には食事睡眠などが必要なく、24時間覚える作業に集中できます。
さらに、その人はキューブの全体の向きが違っても同じパターンだと認識できるので、覚えるパターン数を24分の1に減らせます。(同じ崩れ方でも、キューブの向きによって配色は24通り考えられます。)
一日は86400秒(60×60×24)です。一年は365日です。
これらの情報から考えると、この人が全パターンを覚え切るには
4.33×10^19(通り)÷24÷86400(秒)÷365(日)
≒5.72×10^10(年)
つまり、おおよそ572億年必要だということですね。
ちなみに言っておくと、地球が出来たのは約45億年前、宇宙ができたのは137億年前だそうです。
なにせこれだけ多いので、偶然に頼るだけでは生きているうちにはまず揃わないでしょうね。
逆にいえば、それだけ多い通り数からたった一つの正解を導き出すのに、たった10個そこそこの手順を駆使するだけでよいのです。
「解法」というのがいかに割のいいものであるか、という事もお分かり頂けるのではないでしょうか。
さて、ここ数年はスピードキュービングという、ルービックキューブを速く揃える競技が(これまでより比較的)流行っています。
沢山の人がキューブをすごいスピードで回しているわけです。今までに誰も作っていない状態など存在するのでしょうか。
これもちょっと計算してみましょう。
世界のキュービストの人口を、多めに見て10万人としましょう。
この10万人が、1秒に平均5回という高速回転を1日に3時間、つまり10800秒行い、これを年中やっているとします。
ルービックキューブができてから今まで30年です。スピードキュービングはここ10年ほどにできた競技ですので、期間は10年間としましょうか。
当然ルービックキューブを回しているのはキュービストだけではありません。
普通の人もキューブを回しますよね。
ルービックキューブブームというのもありましたので、次はその時期の事を考えましょう。
ブームがあったので、その時期に20億人がキューブを回したとします。
各人が一人あたり10000回回したと考えましょう。
そして、ブームの時期以外でもキューブを回していた人はいます。今回は、その人口を30年間でのべ20億人と考えます。
そして、その全ての人が平均2000回回したと仮定しましょうか。(3秒に1回回したら2000回で100分かかります。ほとんどの人はすぐ飽きると思いますが、大分多めに設定します。この値を大きく越える人は先程のキュービストの値の方に含めます。)
さて。
パターンに重複が全くなかったとして(有り得ませんが)これらを計算し、これまで人類が回した手数を調べましょう。
5(手)×10800(秒)×100000(人)×365(日)×10(年)+10000(手)×2000000000(人)+2000(手)×2000000000(人)
≒4.37×10^13(手)
つまり、ルービックキューブがこの世に生を受けてから(相当大きく見積もって)今までにおよそ43.7兆回回されているのですね。
そして、先程から何度も申し上げていますが、ルービックキューブの通り数は約4330京です。
4.33×10^19÷4.37×10^13≒9.90×10^6
つまり、人類は今までに、ルービックキューブの全体のおよそ100万分の1のパターンしか見たことがないのです。
いや、この値もそもそもの見積もりもかなり大きいですし、重複を全く考えていませんから、実際は何千万分の1かも知れません。
あれだけのブームが起こっても、我々はまだルービックキューブを100万分の1しか知らないのです。
そして、それは同時に、ルービックキューブにはまだ99.9999%の可能性が残っているという事でもあります。

私が今適当に崩したこの状態も、ほぼ確実に「誰も知らない状態」なわけです。
つまりこれも、ルービックキューブの、また一つの新たな可能性なのです。
(続きは読みたい人だけどうぞ。嫌な気分になっても知りません。)
なんか最後ロマンチストっぽく締めてみましたが、書いてて自分でも厨二だなと思いました。柄にも無いことするもんじゃないですね。まあでもロマンを感じませんか?…感じないですか。
まあ値はかなりおおざっぱですし、何よりコンピュータなどを計算に含めてないですしね。
ただ、僕がこの記事で言いたかったのはキューブのロマンの話ではないんです。(っていうか、ここからの話はこれまでの話とほぼ関係ないです)
「全部調べ上げられて20手で揃うと分かってるのに早揃えに何の意味があるのか」とか言われる事、ありますよね。そういうのに反論をしたいんですね。
コンピュータが全て暴いたから何だというのです。僕らがやってるのは、「人類がどこまでいけるか」っていう事なんです。先程言ったように、人間一人でルービックキューブの全てを知る事は絶対に出来ないのです。
それを意味が無いと言うなら、暗算の技術とか競ったって意味ないでしょう。コンピュータには絶対に勝てません。
囲碁だって、所詮361!通りしかない…ってのは嘘ですが、無限にあるわけではないはずです。何十年後かには「神の一手」だって見つかってますよ。
極論すれば、100m走だって300万分の1秒より早くは不可能です。それさえも意味が無いと言うのですか?
人類の限界に挑む。それが無意味と言うのなら、ほぼ全てのスポーツが、競技が、意味を為さない事になるんではないでしょうか?
さて、今年もあと少しで終わりです。
来年はどちらかというとサポートの側に回りたいですね。受験生になるわけですし。
某プロジェクトも秘密裏に進んでますからね。
それでは、みなさんよいお年を。
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