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Red Bull World Rubik's Cube Championship 日本予選に見る、スピードキューブシーンの今後について

※この記事はあくまでHATAMURA個人の記事執筆時点の見解であり、所属団体の意見を表明するものではなく、また私自身の今後の発言との一貫性は保証されません。

2018年6月24日、Red Bull World Rubik's Cube Championship 日本予選(長い)が行われました。
公式サイト1
公式サイト2

私がこの記事を書く理由はいくつかありますが、最も大きなものは
「この大会のことは、全キューバーが知っておくべき」
だと、大会を通して感じたからです。
スピードキューブ界の今後を語るうえで、この大会の存在を無視することは絶対にできないでしょう。それくらいのインパクトがこの大会にはありました。
そのためにも、この大会のことはしっかり書き残しておくべきだと感じたのです。

そして、この記事を書く最もシンプルな理由は
「めっちゃ良かった」
からです。

端的に言って、良かった。参加者・観戦者・スタッフ、皆が「良かった」と、口をそろえていた。
それは、この記事を書くには十分な理由です。

とりとめのない話が続くかもしれませんが、どうかお付き合いください。


☆事のあらまし
いちおう、この大会の概要、またそれを取り巻く状況についても軽く書いておきましょう。
皆さんの知識の統一のためにも必要な記述だと思います。

この大会は2017年に突如として告知されました。Rubik's Cubeの名を冠する世界規模の大会を、Red Bullが主導して開催する。それは当時のキューバーに、驚きと困惑を持って迎えられました。

大会の部門は3つ。
通常の両手競技"Speedcubing"
片手競技で、インスペクションのない"Fastest Hand"
完成状態から、指定されたパターンにキューブを変える"Re-Scramble"
そして、これらはヘッズアップ(1対1)のノックアウトトーナメント方式で行われます。

世界各国で予選が行われ、各部門の予選1位の方は9月にボストンで行われる世界選手権へ招待されるとのことです。

しかし、この大会にはいろいろ不安な点がありました。
・運営にWCA(世界キューブ協会)は一切関与しておらず、開催概要すらも把握していなかった(一応世界大会2017にレッドブルの関係者が来ており、コンタクトはあったとのこと)
・PR動画に登場した世界的キューバ―は↑のことを知らなかった、どころか虚偽の説明を受けたという話まであった
・2018年から順次予選を行うと告知されたが、日本では4月ごろまで特に音沙汰がなかった

実際、大会の告知や申し込みが始まって以降も、色々不手際や準備不足を感じる部分は多くありましたし、当日の大会の進行も「なんかグダってるなぁ」と感じた部分はありました(このへんは後で少し触れます)。
正直、「色々大丈夫か?」というのが、キューバー達の印象でした。

また、特にキューバ―が気になっていたのは、既存のキューブ団体であるWCAとの関係でした。
WCAではこの大会の告知を受け、「レッドブルと我々は無関係で、特に協力はしないが、レッドブルの大会に参加したからといってWCA的な不利益はない」との声明を発表しました。声明のURLわかる人がいたら教えてくださいろーだいさん情報ありがとうございます)
また、この大会の開催は、WCA内からRubik'sという言葉を消す大きなきっかけとなりました。
WCAの表記で、以前はRubik's CubeやRubik's Clockと書かれていたものが、現在は3x3x3 CubeやClockとなっているのは皆さんご存知でしょうか?権利上の問題などから、前々からRubik'sという表記をやめようという動きはあったのですが、このレッドブルの大会を機にWCAは「ルービックキューブ」との決別をはっきりと表明したのです。
ちなみに、JRCAもこの大会には関わっていません。日本のキューバー側からはtriboxが運営に協力していました。

この辺りの話をさらにややこしくしていたのが、商標を持っているルービック氏の立場です。
ルービック氏はこの大会の告知よりも前に、Rubik's Cube Speedsolving Association (RCSA)という、スピードキューブの団体を新たに立ち上げると表明していました。
そして、今回のレッドブル主催の大会にはRubik's Cubeの名がしっかりと入っていますし、上記のRCSAのサイトにはレッドブルの大会のことがバッチリ書かれています。
これらの点から、「ルービック氏はレッドブルと手を組んで、自分の利権のためにスピードキューブを利用しようとしているのでは?」という疑惑が、キューバーの間でささやかれたのです。
(RCSAは「我々はWCAとは親密な関係にある」と言っていますが、WCAにはRCSAのことは何も書いてないですしねぇ……そもそも今回の大会にはWCAは無関係であると表明していますし)

ただ、このあたりの話は、正直我々いちキューバーの立場では各々の思惑や真実はまったく分かりませんし、またそれをどうにかできるものでもありません。
バックグラウンドを理解するためには必要なことだと思うので、この記事ではあえて書くことにしましたが、そもそも憶測で語るのはあまり良いことではないと思います。

ただ、こういった様々なゴタゴタもあり、今回のレッドブル主導の大会への嫌悪感や、大会への不参加を表明したキューバーが多くいたのもまた事実です。

2018-06-25.png
レッドブル公式のYoutubeにアップロードされた告知動画のスクリーンショット。高評価の25倍以上の低評価がついている

筆者自身も、前情報を聞いてる時点では「どうなるんやろなぁこれ」と思っていました。
まぁレッドブルのことだからイベント慣れはしてるだろうし、なんだかんだ上手いことやりはするんだろうなという気はしてましたが。

☆当日のこと
写真 2018-06-24 15 29 11 
↑会場入り口で記念撮影する筆者(最近コンタクトに変えました)

一部の部門では予選(best of X形式)で人数を削ったあと、32名ないし16名のトーナメント形式で行われました。トーナメントでは両手は3本先取、それ以外は2本先取でした。
ベスト8までは4組同時、準決勝からは1試合ずつで行われました。

会場の様子とかは……たぶん誰かが写真撮ってると思うのでそれを参考にしてくれ。あとそのうちレッドブルから色々レポートとか上がるでしょ。多分。
結果はこちら

会場ではDJによってシーンに応じた曲・SEがかけられ、またプロのMCによる実況や、競技開始の合図のアナウンスなどが行われました。
(MCとDJの名前を失念してしまいました。申し訳ありません)

競技の進行については少々トラブル等もあったものの、盛り上げ上手のMCと競技慣れしたスタッフのおかげもあり無難に進んだかと思います。
一方で、大会の進行については気にかかるところが多くありました。
大会申し込み確認のメールはなかったし、直前のメールにHPのリンクはないし、参加者の規模も読めない。
パズルの回収やスクランブルは妙にもたついていたし、スタッフもどう動けばよいかわからず手持ち無沙汰になっているように見えました。
また、まとまった昼休憩の時間はなく、全種目に出ていた人は昼食のタイミングに困っていたように思います。
初開催なので色々勝手がわからないのは当然のことですが、もう少しうまく臨機応変にやれたのでは?という気もせんでもないです。

ただ、そういった細かな点にじゅうぶん目をつぶれるくらいには、今回の大会は盛り上がったし、一定の成功を収めたと言えると思います。
やはりそこはレッドブル。場を盛り上げるための勝手を知り尽くしています。

ここで「こういう点が良かった」と列挙して書くのは簡単なことなのですが、それを書いたところで会場の熱気と興奮は伝わりきらないでしょう。
残念ながら、これはその場にいた人間にしか分からないと思います。

まぁただとにかくアツかった。これだけはハッキリと言えます。
競技者はもちろん、敗退したキューバーも、スピードキューブを知らないレッドブル側のスタッフも、一体となって大会を楽しんでいました。


ここからは、この大会を通して考えたことをいくつか書いていきたいと思います。

☆コンセプトの違い

"Red Bull Rubik’s Cube World Championshipの目的は何ですか?
 - Red Bull Rubik’s Cube World Championshipは、キューブコミュニティのより多くの機会と可視性を開発することを目指しています。Red Bull Rubik’s Cube World Championshipでの我々の目標は、プロのマインドスポーツとしてスピードキュービングを提唱し、キュービングアスリートに新しいフォーマットで競う機会を与えることです。"
公式サイト FAQより引用)

WCAは、全世界の競技者が公平にかつ公正に、立体パズルを揃える速さを競う場を設けることを目的としています。
近年の大規模な大会では「見せる」ことにもある程度ウェイトがおかれていますが、基本的には誰かと争うことではなく個々人がベストを尽くすことが重要であり、そのために場を整え、より多くの人に公平な機会を与えることがWCAの役割です。

一方で、今回のレッドブルの大会では、徹底して大会を「魅せる」ことに主眼が置かれていました。
場を盛り上げるためならば、インスペクションタイムも8秒や0秒にするし、なんか回転する電飾も点けまくるし、競技は一斉スタートにするし、開始と同時に大音量で音楽も鳴らしますし実況もします。
競技は1対1の対戦形式とし、タイムではなく1回1回の勝ち負けで順位を決めてしまいます。
WCA形式の大会にはなかったスピードキューブの「パフォーマンス性」を、レッドブルが存分に引き出したのです。

これらはどちらが良いとかではありません。目的が違う以上、比較はできても優劣をつけるのはナンセンスなことです。
ここで重要なのは、WCAは今回のような大会は開いてこなかったし開けなかっただろうということ、そしてレッドブルだけではWCAほどの人数・規模・頻度の大会はできないだろうということです。

普段の大会に出ている人なら分かるかと思いますが、実際キューバーは他人の記録なんて意外と興味ないものです。せいぜい友人とか知り合いの記録を見るくらいです。
そんな彼らでも、今回のレッドブルの大会では1試技ごとに歓声をあげ、競技者の一挙手一投足に注目し、一体となって盛り上がっていました。それが可能となったのは、この大会が「観客を楽しませること」に全力を注いでいたからに他なりません。

☆外部からの企業の参入
もうひとつ、WCAとレッドブルの重要な違いがあります。

WCAは、キューバー達が誰に言われるでもなく自分たちで作り上げた、一つの大きな「コミュニティ」です。
それゆえ、大会においては競技結果だけではなく、キューバー同士の交流も大きな目的となっています。普段なかなか会えないキューバーが一堂に会し、キューブを通して交流を深めていく。それはたとえ世界大会だろうと同じです。

そうしてキューバー同士で作り上げてきたスピードキューブの「場」に、レッドブルはまさに黒船のごとく乗り込んできたわけです。
独自のフォーマットを持ち込み、Rubik'sというブランドを掲げ、大々的に広報する。
そしてこれはレッドブルのスポンサー活動の一環である、というのが多くの人に嫌悪感を生んでいるわけです。

人によってはここでピンとくるかもしれません。
そう、これは規模こそ違えど昨今のeスポーツ界隈が抱えている問題そのものです。
プレイヤー同士が築いてきた場にいきなり踏み込み、そこで鍛えられたプレイヤーのスキルを広告のように扱うことに対して、既存のコミュニティから反発が起こるのは当然のことなのです。

そして、eスポーツがそうであるように、この件に対する円満な解決方法はないでしょう。議論を尽くしたところで万人が納得する結論が得られるとは思えません。どう転ぶにせよ、そこには痛みが生まれると思います。

しかし一方で、これはキューブ界にとって大きなチャンスであるとも思います。
スピードキューブ界の規模拡大に向け、新たな層にリーチするには、広報の力は不可欠。しかしプレイヤー同士のコミュニティにそれを求めるのは酷でしょう。
外部の企業の力を借りることは、それを補う手段になり得る。


正直、大会が行われるまでは自分も半信半疑でした。レッドブルが目指しているものは何なんだ?それはスピードキューブに必要なものなのか?と。
そして、大会がショボかったら、今回のことを記事にすることすらなかったでしょう。

この大会は正直スゴかった。これまでのキューブ界になかったものがありました。
それはWCAのコミュニティだけでは絶対に気づけなかったものです。

今回のレッドブルの大会は、スピードキューブの新たな可能性を、十分に感じさせてくれました。
これだけでも、この大会を開催する価値は大いにあったと思います。

☆おわりに
スピードキューブの新たな可能性。
まぁ一言でいってしまうならば、「スピードキューブのパフォーマンス性」それにつきるわけですが。
スピードキューブはパフォーマンスには向いてないなと思ってたんですが、結局ルールと見せ方の問題なんだなぁというのに気づけたのは個人的に大きな発見でした。

まぁただ、大会に多くの方が満足していたのは間違いないですが、そもそも大会のコンセプトに賛同してない方もいるわけですし、やっぱ難しい問題も孕んでるよなぁと思うわけです。

でもアレを見せられてしまった以上、絵空事と切り捨てるわけにはいかないんですよね。
これはじゅうぶん考えるに値することだと、今回痛感させられてしまったので。

だからこそ、皆さんにも考えてほしい。
そのために、まずは知ってほしいのです。

このレッドブルの大会が見せてくれたもの。その可能性について。
スピードキューブ界の将来の姿について。
一人でも多くのキューバーの、考えるきっかけになればと思います。
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コメント

WCAの声明のURLどうぞ。
https://www.worldcubeassociation.org/posts/statement-of-the-wca-board-on-the-red-bull-rubik-s-cube-world-championship
by: ろーだい * 2018/06/25 09:37 * URL [ 編集] | page top↑

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プロフィール

HATAMURA

Author:HATAMURA
1993年生まれ。
「充実した人生」が目標。
ルービックキューブを始めたのは'07年2月。

公式記録はこちら

解法やテクニックについて知りたい方はこちらへどうぞ。僕も運営に関わっているサイトです。
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